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【Photo Sketching】ドミナントカラーで描く氷と雪の世界

公開日:2021-01-13 ライター:タケル カテゴリ:テーマで撮ってみよう

美しい光景を飛躍させてみよう

デジタルカメラ、特にPENTAXのカスタムイメージのように現場で画を作り込めるカメラは、心惹かれる光景に出会ったとき、それを見ながら作り込めるのが優れた特性のひとつ。

しかし時にはその特性によりその場のイメージにひっぱられ飛躍したイメージを作りにくい面もあります。その意味では絵画やイラストはより自由な表現方法と言えますが、ここは「Photo Sketching」。カメラを使って氷の世界を描いてみます。

CTEとドミナントカラー

さて、現実からはちょっと離れたイメージを作るために今回はドミナントカラーと呼ばれる配色を使います。都合の良いことにPENTAXのカメラにはドミナントカラーを作りやすいホワイトバランス(WB)、CTE(Color Temperature Enhancer)というものがあります。

連続多色による華やかな配色

カラーサークルのおよそ120°、つまり円周の3分の1の範囲の色相を均等に取り出した4、5色のすべてを使ったカラフルな色調の配色方です。
─中略─
色彩学では、一部に「ドミナントカラー」あるいは「トーンオントーン配色」などと記している本がありますが、これも 連続多色の配色」の一種ととらえてもよいでしょう。色彩デザイン学より

【ホワイトバランスCTE】

基本的にはAWBの一種なのですが、画面内で大きな割合を占める色があるとそれを強調しようという動きになります。桜であったり、緑(新緑)であったり、空であったり、夕景、朝焼けなどのAWBで撮影してしまうと色あせてしまうような条件でも、印象的に色彩豊かに表現することができます。 様々な風景で実写を行い細かなチューニングを繰り返し行うことで、心地よい色の強調になるように配慮されています。 【ホワイトバランスCTE】ペンタックス (PENTAX by RICOH IMAGING)

もともとドミナントに近いシーンで効果を発揮するCTEですが、PENTAX以外のカメラでもシーンの色を強調する方向でWBを(マニュアル)調整することで同様の画作りは可能です。

青く煌めく雪と氷の世界を描く

さて、2021年は強い寒波とともに始まりました。立ち行かなくなるほどの大雪は困りますが、強い寒気は近場の森にも幻想的な風景を作り出してくれます。今回は標高600m前後の埼玉県の秩父の森。

撮影したのは昨年の冬で、その当時は青白く雪に彩られた森に金色を帯びた光が射し込みキラキラした光景として仕上げました。一年が経ち、ドミナントカラーで仕立て直してみたらどうだろう?と試して見たのが今回のものです。とはいえ、写真のフレームの中にはそう都合良く色相にして120°に収まってくれることはないので、ドミナントを意識してまとめるぐらいのイメージです。

イメージをエンハンスしてみる

谷間に射し込む暖かみのある光に樹氷が煌めく光景が美しく、その雰囲気を切り取ろうとしたのが1枚目の写真です。

_K1_0940.jpg
撮影時のイメージ(撮って出し)

朝の早い時間帯なので薄暗いなかに強い光が入ってきたことで非常にコントラストが高いシーンでした。撮影時の設定もその状況に強く影響を受けています。

_K1_0425.jpg
CTEを使ってドミナント配色に

そんなシーンをドミナントを意識しながらカメラ内RAW現像で仕上げ直したのがこちら。補色(色相環で180°の関係にある色の組み合せ)を使って光の暖かみを軸にした撮って出しに対して、凍った森に降り注ぐ光の神々しさを演出してみました。

color-range.jpg

再現像の際に意識した色相のイメージはこのようになります。太陽の周辺にシアン付近の色相を置き、手前の暗い領域にかけてブルーへのグラデーション、上部左右は針葉樹の深いグリーンという構成です。相手が自然の風景なので当然それら以外の色(例えば地面や木肌の茶褐色)も部分的に入ってきますが、全体として狙った色相へ偏らせるのにCTEというWBが効いてきます。

先ほど引用したとおり、CTEでは画面内の主要な色を強調する方向でホワイトバランスを作ります。夕焼けなど視界が特定の色に占められるようなシーンで使うことが一般的かと思われますが、ほんの少し偏りが出やすいAWB(オートホワイトバランス)として考えると意外と印象的なシーンを作りやすいWBモードです。

雑味を減らして澄んだコントラストを

_K1_0989.jpg自然な印象の撮って出し

_K1_0423.jpgCTEを使ってドミナント配色に

同じく撮って出しをCTEを使ってドミナントに手直しした雪化粧の武甲山(埼玉県秩父市・横瀬町)。色相がまとまることで特徴的な山肌が際立ちました。

_K1_1001.jpg
自然な印象の撮って出し
_K1_0424.jpg
CTEを使ってドミナント配色に

光の暖かみをとるのか煌めきをとるのかの話なので良し悪しではないのですけど、色相が絞られたことですっきりとしたコントラストになりました。

配色から画作りするのも面白い

配色のパターンに着目して過去に撮影した写真を再現像した今回のPhoto Sketching。ドミナントカラーの他にもスプリットコンプリメンタリーなど、写真の中に活かしやすいパターンは他にもあります。

二度目の緊急事態宣言で出かけにくい状況ですが、過去の写真をお色直しすることで新しい発見があるかもしれません。

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この記事を書いたライター

タケル

ペンタファンの運営メンバー(編集長)です。作例写真の撮影から記事の執筆、運用を行なっています。山に登ったり燻製を作ったりネコを撫でたりするブログを書きながら(SpaceFlier)急に真顔で写真を語り(Imaging World)ます。