HOME カメラであそぶ 撮れるを広げる 壮大なスケールの光を操る神のツール ─ 角形フィルターのススメ Vol.2

壮大なスケールの光を操る神のツール ─ 角形フィルターのススメ Vol.2

公開日:2021-08-27 ライター:タケル カテゴリ:撮れるを広げる

大スケールの光をコントロールする全能感

角型フィルターで撮影の幅を広げるシリーズ第1回の「至高の夕景を目指してNiSiへ ─ 角形フィルターのススメ Vol.1」では、角型フィルターってどんなもの?といったことや使い方を紹介しました。

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さまざまなグラデーションND

詳細については前回の記事を参照いただくとしておおざっぱにまとめると、「専用のホルダーを介することで、丸形のフィルターではできない(全くないわけではないのですが)グラデーションを伴う減光効果で、フレーム内の輝度差をコントロールできる」ということが角型フィルターの大きな特徴で、GND(グラデーションND)と呼びます。

GNDはグラデーションの幅や変化量はさまざまで、撮影の自由度を大きく高めてくれる存在です。例えるなら、壮大な風景に降り注ぐ光をコントロールし、思い通りの写真を創り上げられるまさに神のツール。フォトグラファーに世界を創る全能感を与えてくれる道具と言っても過言ではありません。

今回はNiSi 100mmシステムのV6ホルダーにNDフィルターとGNDでストレートな組み合わせの実用例を紹介します。

NDフィルターによる表現の変化

まずはNDフィルターによる表現の変化です。

SOFT GNF 露出調整 + PL調整
SOFT GNF 露出調整 + PL調整 + 3STEP ND
SOFT GNF 露出調整 + PL調整 + 6STEP ND

左からSOFT GND+PL調整のみ、SOFT GND+PL調整+ND8(3step)、SOFT GND+PL調整+ND64(6step)です。これは丸形でも角型でも変わらないのでイメージしやすいと思います。NDの減光によりシャッタースピードが変化し、滝の水流や川面の波立ちに違いが現れています。

効果自体はシンプルなので珍しさはありませんが、ホルダーにスライドするだけで減光量を切りかえられるので利便性はとても高いです。

GNDによる表現の違い

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NDの効果の差に続いてはGNDの効果作例です。左からフィルターなし、SOFT GND+ND64(6step)です。空がやや霞んでいたので夏空の青さを強調するために水平線から上にSOFT NDをかけています。

GNDは正方形ではなく、長方形になっているため、ホルダー内でスライドさせることで効果を加減することができます。

続けて実際の撮影の中での活用例をご紹介します。

実用例:モノクロームで印象的な空の表現をする

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カスタムイメージ内のフィルター効果を使って印象的なコントラストを作ったモノトーン写真

黒澤映画のように青空をズドンと沈め印象的なコントラストを演出するためにミディアムGNDとカスタムイメージ(PENTAXのカメラに搭載される画づくり機能)内の赤外調フィルターを使用しました。

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赤外調フィルターで青を落とす前提で色温度を変化させると全体に色被りする

もともとカスタムイメージモノトーンの赤外調(やレッド)は青に敏感に反応する特徴があります。重厚な空を描くために色温度を極端に変化させると全体的に色が被ってしまい望んでいない変化も起きてしまいます。上のカラー写真はGNDを使わずモノトーン時の空のトーンを探っている中で撮影したものですが、空以外の部分が全体的に青から緑に寄ってしまっています。

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そこで色温度の調整はほどほどにとどめ、グラデーションの境目が比較的狭いミディアムGNDを使って空の輝度を落とすことにしました。直線的なグラデーションなので仕方のないことですが、GNDを使ったことで空に重なる人物も暗くなってしまいますが、赤外調やレッドなどのフィルターの特性で肌や笠の色は明るく表現されるのである程度は相殺されることを想定して撮影しました。

実用例:夕景ポートレート

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GNDとクリップオンストロボを併用した完成写真

地平線(水平線)に沈む夕陽をバックにしたポートレートです。台風の合間という気象条件もあり、地形上の高度や距離の差に加えめまぐるしく変わる空模様による輝度差が大きかったためリバースGNDとクリップオンストロボを使用して撮影しました。

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GNDのみで撮影。人物が背景に埋もれてしまった

先ほどのモノトーンの写真と同様に、輝度差のある風景の調整のためにGNDを使用すると当然ながらその中にいるモデルも影響を受けてしまいます。左の写真では単純に画面上下方向の輝度差を整えるためにGNDを使用した結果、右側に立つモデルがすっかり背景に埋もれてしまいました。

そこでクリップオンストロボで手前の光量を補うことにしました。風景のスケールに較べクリップオン(モノブロックであっても)の光量が影響する範囲は限られたものであることを逆手にとり、フラッシュライトでモデルの明るさのみを調整しました。

おまけ

NDやGNDといった角型のフィルターを撮影に組み込むことで、シャッタースピードの変化による表現の広がりや、フラッシュライトを組み合わせることで可能になるより立体的な表現をご覧いただきました。

カスタムイメージによる柔軟な画づくりに加えて、さらに複雑な表現が可能になる角型フィルターですがPENTAXユーザーならではの悩みもあります。それがLimitedレンズ群。

独特な描写で手放せない存在でありながらフードが固定されたレンズもあり、せっかくの角型フィルターシステムが使えないのです。

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FA 31mmF1.8 Limited ALにGNDを手持ちで重ねて撮影

そんな時はフィルター(ガラスそのもの)を手持ちで(落とさないように気をつけながら)重ねればご覧の通りダイナミックな写真のできあがり。

興味が出たら手持ちスナップでの幅を広げる、手に取りやすいGR用のキットもあるのでぜひお試しを!それでは!

撮影協力:NiSi Filters Japan

この記事を書いたライター

タケル

ペンタファンの運営メンバー(編集長)です。作例写真の撮影から記事の執筆、運用を行なっています。山に登ったり燻製を作ったりネコを撫でたりするブログを書きながら(SpaceFlier)急に真顔で写真を語り(Imaging World)ます。