寒い。
息を吸い込むと、今にも肺が凍り付くかという錯覚にとらわれる。冷たいカメラを片手に森を歩いていると、小川を挟んだ対岸に凍った石清水を見つけた。その美しさはどんな名瀑にも劣らない程で、圧倒的な存在感を放っている。繊細な光が段階的に落ち、光と共に枯れ葉が氷の美しさを際立たせていた。レンズを付け替え、ファインダーをのぞき込む。
この作品は特に光の浮かび上がり方を意識して切り取った。上から下に光が段階的に落ちていく様子を追体験できるようなイメージだ。枯れ葉を使い、その部分が印象的に浮かび上がるように調整している。
氷を撮影する際に注意しなくてはならない点は白飛びだろう。白飛びをさせず、なおかつ光の調整をして全体が暗くなりすぎない限界を見極める必要がある。派手な光が無くとも、繊細な光で空間を構成するだけでも作品は成り立つ。