HOME カメラであそぶ 撮れるを広げる カメラアクセサリー 君はプログレードデジタルというアッツアツのメモリーカード屋を知っているか? Vol.2

君はプログレードデジタルというアッツアツのメモリーカード屋を知っているか? Vol.2

公開日:2021-06-20 ライター:ペンタファン編集部 カテゴリ:カメラアクセサリー

Vol.1ではプログレードデジタルというメモリーカードメーカーの根底流れるマインドについて、鉄も真っ赤になるほどの熱量で語っていただきました。Vol.2では具体的に私たちがメモリーカードに抱いている疑問をぶつけてみたいと思います。

Vol.1、Vol.3はこちらのリンクよりご覧ください。
君はプログレードデジタルというアッツアツのメモリーカード屋を知っているか? Vol.1
君はプログレードデジタルというアッツアツのメモリーカード屋を知っているか? Vol.3

デュアルスロットが片手落ちなのはなぜ?

dualslot.jpg
せっかくのデュアルスロットでも速いのは片方だけ。その理由とは……?

ペンタファン

引き続きよろしくお願いします。いきなりメモリーカードそのものではなくホスト(カメラ)側の話になってしまうんですが、PGDではカードリーダーもラインナップしていることから、ハイクラスのカメラで採用されることの多いデュアルスロットのことをお聞きします。

PENTAXに関連するところで言えばK-3 Mark IIIでようやくUHS-II対応の機種が現れたのですが、待望の高速カード採用であるにも関わらずデュアルスロットのもう一方は従来規格であるUHS-Iでの対応です。これは他社でも同様のケースが多く見られますが、この理由についてメモリーカードメーカーからの視点で教えていただけないでしょうか。

大木さん

UHS-IIとUHS-Iという組み合わせの場合、はっきり言うとコストの問題だと思われます。CFexpressとUHS-II(SDXC)のようにサイズが違う組み合わせであれば多くの場合はスペースの問題です。

少し話が脱線するのですが、カメラというハードウェアに関しては、PCやスマホと同じデジタルデバイスという意識を持った方がいいと「強く」思うんですね。

なぜかというと、PCもスマホもそうなんですけど、CPUがあってDRAM(カメラでいうとバッファメモリ)とメモリデバイスがついている。常にこの3つのバランスが取れていないとどれかがボトルネックになってしまう。CPUがいくら速くてもメモリ(DRAM)が少ないとパフォーマンスを引き出せないし、スマホだって皆さんそう思って使っているじゃないですか。例えばiPad Proの16GBというモデルが2021年にあったとしてもストレージが小さすぎて誰も買わないですよね。デジタルカメラもそうです。CPU、DRAM、メモリデバイスのどれかのパフォーマンスが低いと、他のすべてがそれに引っ張られてパフォーマンスを下げてしまいます。

ここでカメラのメモリーカードスロットに戻します。UHS-IIの中にも速いモードと遅いモードがあるんですね。ここが注意しなければならないところで、同じUHS-IIでも速い・遅いが混在していると、同時に両方のスロットに書き込む場合は遅い方に合わせることになるんですね。

UHS-IIの中の速い遅いよりもさらに顕著なEOS R5を例にします。EOS R5では書込み速度が1500MB/sのCFexpressと250MB/sのUHS-II(いずれもPGDのコバルトカードの場合)では6倍の速度差があります。R5の場合は高画素かつ高速連写が可能なモデルということもありますが、両方のスロットに同時書込みを行なうとUHS-IIがボトルネックになってしまう可能性があります。

ペンタファン

そうですね。私(すしぱく)はEOS R5で撮影するときはSDカードスロットはそれが理由で使っていません。

大木さん

ダブルスロットの両方に同時に書き込む場合、一般的には同時にでたデータを同時に書き込み、遅い方を速い方が待つ挙動をとります。RAWをミラーリングするとなるとせっかく速いカードスロットを備えていてももう一方の遅いカードが確実にボトルネックになることがあります。

ではRAWとJPGの振り分けではどうかというのは画素数や連写速度にもよるんですが、R5のようなカメラの場合、遅い方(この場合SDカードスロット)がボトルネックにならないかデータの転送量と書込み速度によっては振り分けずにCFexpressに全部書き込んだ方が良い結果を得られます。

ペンタファン

なるほど……冗長性を確保するために同時書込みを選択するという方もいるかと思いますが、その場合はパフォーマンスはトレードオフになるということも踏まえなければなりませんね。

大木さん

デジタルデバイスの速度というのは突き詰めるとタイムラグなんです。フィルムのようにシャッターが走った瞬間に感光する、ゼロに近いのが理想です。インターネットにしろPCにしろスマートフォンにしろ、私たちがイライラしたりストレスを感じたりするのはタイムラグによるものです。

メモリーカード屋からするとカメラのタイムラグをなくす、そんなデバイスを提供するのが使命です。ユーザーがタイムラグを感じないという状況を作ることがベストです。だから同じ仕様のデュアルスロットにして欲しいと感じています。

逆の面から見ると、新しいカメラを開発する際にカードが速度を出せないからホストの足を引っ張るということがあってはいけないんです。カードに待ち時間が発生するということは非常に高価なバッファをどれだけ積まなければならないのか?という状況になります。だからこそカードの能力をフルに使うカメラはないという状況や規格を作っていくのです。

ペンタファン

デュアルスロット裏側にはさまざまなせめぎ合いがあったのですね。ユーザーとしてはハイクラスのカメラなんだからデュアルスロットを搭載していないと、という声をよく目にしますが、私たちも実用に足るデュアルスロットを実現してもらうためにはメモリーカードに対する理解を深める必要がありますね。

なぜ販売はAmazonだけなの?

ER6_0688.jpg
究極にコンパクトなプログレードデジタルのパッケージ。この包装にも熱い理由が……

ペンタファン

続いては販売方法についてうかがいます。現在PGDの製品はAmazonのみで取り扱っているそうですが、いくつか気になっている点があります。一つは他社のメモリーカードのように偽物の存在はあるのかということ。もう一つは他のECや量販店のような実店舗での販売は検討しているのかということです。

大木さん

ひとつめの質問、偽物についてです。偽物を売るということはそもそも偽物を売る人に利益がないと意味がないですよね。安く作ってラベルをすり替え、相応の価格で売ることで利益を得る。ところが現在は大手メモリーカードメーカーの多くは日本内外での価格差が大きく、並行輸入するだけで十分な利益が出てしまうのでリスクを負ってまで偽物を作って売る必要がありません。ですのでPGDはもちろん他社製品でも偽物はあまり流通していないと思われます。

PGDについて詳しくお話しすると、我々はアメリカをのぞいてAmazonでしか扱わないことで中間マージンをなくし価格を抑えた世界共通価格とすることで構造的に並行輸入品を扱うインセンティブをなくしています。偽物を作って売っても、そもそも正規品の価格が低いので大した差額がない。リスクを負って偽物を売るメリットがないんです。

ペンタファン

たしかにPGDの製品はとても魅力的な価格設定です。ビジネスの構造として偽物が入り込む余地を作らないという話は説得力がありますし、ユーザーとしては安心して購入できますね。

大木さん

もう一つの販路についてです。いくつかの理由があるんですが、そのひとつとしてAmazonのプラットフォームを利用することで顧客とダイレクトにコミュニケーションができることがあります。Amazonに集約していることで誰が何をいくつ買ったのかが把握できているので、充実したサポートを実現することが可能になっています。

一例として購入履歴がしっかりわかっていることでカードに問題があったときにユーザーの方に煩わしい購入証明をしてもらわなくても済みますし、迅速な交換品の発送ができています。もちろん他のECや量販店のポイントが使いたいというニーズに対してはご不便をおかけしているのも理解していますが、それ以上に充実したサポートやセールスキャンペーンを展開できることにメリットを感じています。

加えて、Amazonに販路を集約することでパッケージを含めたコストを大きく削減できます。詳細は省きますが、Amazonのプラットフォームを利用してごく簡易なパッケージでお届けできることが高性能なカードを手に取っていただきやすい価格の実現に一役買っています。

ちなみに現在流通している小さなパッケージはウェスの日本での経験によるものです。日本の量販店では万引き防止に店頭にはダミーカードを並べますよね。海外では同じ効果を狙うために小さなカードに対してとてつもなく大きなパッケージなんですが、店頭に置かないことを前提にすることで最小限のパッケージングでさまざまなコストを圧縮しています。

ペンタファン

素朴な疑問を投げたのが恥ずかしくなるぐらい、裏側では合理的かつユーザーの利益を考え抜いた販売方法の選択だったのですね。「こんな小さなパッケージなのに10万円もするんだよな……」なんてボヤいてすいません。

素朴な疑問ついでというわけではないのですがラベルの色についても伺ってもよろしいですか?

ラベルの色、シルバーがコバルトなのはなぜ?

プログレードデジタルのメモリーカード

ペンタファン

シルバーのラベルがなぜ「コバルト」なんでしょう?一般的には青いイメージの「コバルト」がシルバーのラベルでゴールドはイメージ通りの「ゴールド」です。

大木さん

これは本当に笑い話なんです。もともとコバルトはプラチナをイメージした色だったんですよ。PGDで「プラチナ」を使おうとしたらすでに他社(しかも古巣)のメーカーで商標になっていたという……

それでウェスが金属でプラチナより高そうなイメージはなんだと考えて出てきたのが「コバルト」だったという理由です。そんなイージーな理由でいいの?と私も思いましたけど、これが理由です。

ペンタファン

本当に笑い話でした(笑)

大木さん

そうなんですよ。それならシルバーの上にゴールドにすればいいじゃないと思うんですが、実はPGDのスタンダードとして先に「ゴールド」を使っちゃってたんですよね。スタンダードに「ゴールド」というのはちゃんと意味があって、PGDのスタンダードラインはとてもいいものなんですよというメッセージなんです。

入り口にあるものがちゃんといいもので、その上にさらにいいものとして「コバルト」があるわけです。エントリーとハイグレードではなく、ハイグレードとスーパーハイグレードのイメージです。

ペンタファン

これもウェスさん、大木さんがメモリーカードメーカーを渡り歩いてきたからこそのエピソードですね。素朴な疑問が想像以上のバックストーリーをはらんでいたVol.2。メモリーカードとの付き合い方にフォーカスを当てたVol.3へ続きます。次回もお楽しみに!

セールのお知らせ

Amazon.co.jp プログレードデジタル

2021年6月21〜22日に開催されるAmazon Prime DayでプログレードデジタルのCFexpress製品が 20%OFF、SD Cobalt製品が10%OFFとなるセールとなるそうです。この後に続くインタビュー本編でプログレードデジタルのメモリーカードに興味を持たれた方はぜひこの機会に手に取ってみてください。

Amazon Prime Day

この記事を書いたライター

ペンタファン編集部

PENTAXの一眼カメラ、手に握ってファインダーを覗けばやっぱり楽しい。一緒に沢に落っこちたり、泥にまみれてくれるそんなカメラが楽しくないわけない。そんな楽しさ・面白さをシェアしたい、そんな場所がペンタファンです