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君はプログレードデジタルというアッツアツのメモリーカード屋を知っているか? Vol.3

公開日:2021-06-21 ライター:ペンタファン編集部 カテゴリ:カメラアクセサリー

Vol.2ではデュアルスロットやAmazonのみでの販売方法の裏側について詳しく語っていただきました。続くVol.3ではユーザーサイドに近い部分の話をお聞きします。

Vol.1、Vol.2はこちらのリンクよりご覧ください。
君はプログレードデジタルというアッツアツのメモリーカード屋を知っているか? Vol.1
君はプログレードデジタルというアッツアツのメモリーカード屋を知っているか? Vol.2

UHS-IIの動作モードやパフォーマンスについて

ペンタファン

K-3 Mark IIIで採用されたUHS-IIのについて伺います。SDカードにはUHS-IIやUHS-Iといったスピード規格がいくつかありますが、これらについて教えていただけますか。例えばUHS-Iでもシングルショットではさほど体感に差は出ないかと思われますが、連写時などにどれほど違いが出るのでしょう。

大木さん

まずUHS-IIについてです。UHS-IIってUHS-IIとUHS-Iの両方で動く非常に複雑な規格で、カードをカメラに差したときにこのカードはUHS-IIなのかUHS-Iなのかとやり取りをします。ここでカメラとカードがお互いにUHS-IIだと理解し合うとUHS-IIとして動作します。ここでコミュニケーションがうまくいかないとUHS-Iモードで動作するということがあります。カードがスペック通りのパフォーマンスを発揮していない場合、これが起こっている可能性が考えられます。

とはいえ、この原因には様々な要素が絡むので一概に何が原因と言えません。ファームウェアの問題かもしれないし、カード自体に不具合があるかもしれない、差し込みが上手くいっていないかもしれないので。

この中でカードに問題があるケースはPGDで先日公開したリフレッシュプロというソフトで解決できる場合があります。

メモリーカードって変わったテクノロジーで、簡単に言うとビデオテープなどのようにデータを決まったところに書くわけではなく、上書きできない仕組みになっています。次にデータを書き込むときにそのセルにデータが残っていると「消して書く」ことになります。

カメラなどでカメラを使用する前にフォーマットをすることがありますよね。多くの場合、この作業は例えば「写真1」はどのデータというリンクを切るクイックフォーマットです。この時、データは実際には消えておらず、たくさん写真を撮る(つまり書き込む)と空いているセルがなくなり、すでに書込のあるセルにあたります。その時に書き込まれるときに「消して書く」ことになります。

CANON EOS R6のフォーマット画面
CANON EOS R6のフォーマットメニュー。物理フォーマットの機能があることがわかる。

この状況が続いていくと単純に「書く」のではなく「消して書く」が多発するようになりガベージコレクションという機能が働きます。カード自体がゴミ拾いをするのですが、この間は書込みができません。つまりパフォーマンスが落ちることになります。そのためリフレッシュプロにはサニタイズという機能があり、カードをまっさらな状態にもどすことができるようにしています。連写をするようなシチュエーションではこれが差になって現れるので、物理フォーマットやサニタイズを行なってカードをクリーンな状態に保つのが望ましいです。(カメラ上で物理フォーマットができるのは記事公開時点ではキヤノンのカメラに限られるようです)

スチルの連写の場合は「バババババッバッバッバ……」とだんだんと遅くなってくるために少し分かりにくいのですが、動画の場合はハッキリと止まってしまうので顕著に影響が出ます。お風呂の栓を開けたまま水を流している状態をイメージしてもらえると分かりやすいですね。栓から出て行く水の量と入れる量が釣り合っていると水は溜らないけれど、入ってくる量が出ていく量より多いと溢れます。

黒板は綺麗な方が書き込みやすいですよね
黒板は綺麗な方が書き込みやすいですよね。

バッファの範囲内で起こるガベージコレクションならば溜らないんですね。そういう状態にしておくのがビデオ撮影にとっては良い状態で、そのためにサニタイズしてカードをフレッシュな状態にしておくのは望ましいんです。

ペンタファン

なるほど、ガベージコレクションかどうかははっきりしませんが、連写をしているわけでもないのに書込みに時間がかかるケースには心当たりがあります。K-1 IIを使う際、撮影してからしばらくカメラ内RAW現像で追い込んだりするために、以前のRAWデータを残しながら空いた領域で次の撮影を続けることがあるのですが、シングルショットなのに書込みで待たされることがあります。

大木さん

先ほど少しキヤノンのカメラに物理フォーマットの機能があることに触れましたが、あれはとても優れた発想なんです。

メモリーカードの扱いについて

ペンタファン

なるほど。せっかくメモリーカードの状態についてお聞かせいただいたので、カードの扱いまで話を広げてお聞きしたいと思います。

大木さん

今回のインタビューのきっかけはすしぱくさんのCFエクスプレスカードのトラブルでした。確実にこれが原因だというお話しはできないのですが、一般的に起こりやすいケースについてお答えします。

メモリーカードにとって一番の恐怖は書き込んでいるときにスロットから抜かれてしまうことなんです。プロの方はやらないと思うんですが、カメラやPCのカードスロットって物理的に抜けてしまうんですよね。

またキヤノンの場合になってしまうんですが、カードスロットの蓋を開けると電源が落ちる仕様になっているんです。カードとカメラって常にコミュニケーションしているので突然抜かれてしまうと阿鼻叫喚なんです。

実はホスト(カメラやPC)とカードの終了処理の間に起こるトラブルがカードが認識できなくなる一番大きな機会なんですよ。ここがうまくいかないと管理ファイルにエラーが出たりして写真のデータにアクセスできないということが起きてしまいます。

カードにとっての最大の恐怖。ケーブルを引っかけて不慮の接続解除……カードにとっての最大の恐怖。ケーブルを引っかけて不慮の接続解除……

メモリーカードとホストの物理的な接続は案外危ういものなんです。例えばプロが現場でノートブックにバックアップを取るとき、バタバタしていたりしてデータ転送中にリーダーのケーブルを引っかけるなどして(物理的に)飛ばしてしまうと重大なエラーの原因を作ってしまう。こういったリスクを防ぐためにPGDのカードリーダーにはマグネットをつけて固定できるようにしてあります。

PCの近くでマグネットを使用するのは危ないんじゃないのか?という声もあります。HDDにダイレクトに貼り付けるというのであれば勧められませんが、iPadにマグネットが搭載されているようにSSDなどのメモリーでは心配するような影響はありません。それ以上にカードの読み書き中にエラーを起こすリスクを減らすことを重要視して搭載しています。ちなみにPGDのカードリーダーは高価ではあるんですが、付属するケーブル含めて高性能な部品を選んでいるのでほとんど利益のない価格設定になっています。

メモリーカードの熱問題からバッテリーライフの話

ペンタファン

最近のカメラでは8K RAWといった非常にカメラやメモリーカードに負荷の高い撮影分野が出てきています。例えばEOS R5です。8K RAWで撮影していると熱によってシステムが停止することがあり、使用しているCFexpressカードも相当熱くなるのですが機能的に問題はないのでしょうか。

大木さん

カメラと同じくカード自体にも、ある程度の熱を持つと速度を下げるサーマルスロットリングという機能が備わっています。ですので触ると熱いのですが、カードが壊れるほど熱くならないようになっています。 SDカードだとそこまで熱くならないので(8K RAW撮影時のCFexpressカードでは)心配になると思いますが安心してください。

8K RAWという速度を必要とする話が出たのでついでに電力消費に寄り道すると、速度が速いことによって消費電力を抑えることにも貢献しています。

カメラの中で消費電力が大きいデバイスはCPUとモニターなんです。これに対してカードの書込みに必要な電力ははるかに小さいので、早く書込みが終わるほど早くCPUとモニターの電源を落とすことができ、バッテリーの消費を減らせます。

つまりミラーレスのようにエレクトリックデバイスの比率が高まるほどカードが高速化する恩恵が大きくなるんです。

ペンタファン

これは興味深い話ですね。言われてみれば私がK-1 IIで撮影しているときに一眼レフの割にバッテリーが持たないと感じていたのは、カスタムイメージの調整のためにCPUやモニターの点灯時間が多かったり、パフォーマンスが出ていないカード(しばらく物理フォーマットをしていない)を使っていたからかと合点がいきました。

大木さん

これはカードに書込みをしている間はカメラ中の電源がオンになっているからで、連写や動画ではなく、シングルショットであっても書込みが速いことで次のショットのためのスタンバイへの移行も早くなりますし消費電力も抑えることができるので高速なカードを選ぶ意味があるんです。

デジタルカメラのバッテリー消費にはさまざまな要因が絡むのですが「カードへの書込みが起こっている間はフルで電力を消費している」という意識を持ってもらえるとバッテリー管理もしやすいんじゃないかと思います。

デジタルデバイスにとって「速い」ということは熱を持つこと以外、基本的にポジティブなことです。

ペンタファン

なるほど。これからはカメラが最大限のパフォーマンスを出せるカードを選ぶようにします。

大木さん

私がメモリーカードメーカーの人間だからというわけではないんですが、カードのコストパフォーマンスを計算する際、カード価格 ÷ カードの容量 ÷ 書込み速度で計算してみてください。そうするとおおよその場合、高速なカードの方がコストパフォーマンスも良いという結果になるんですよ。ちなみにCFexpressの325GBのカードは速度を出すために内部的には1TBぐらいのメモリーを積んでいるので非常にお買い得です。

ペンタファン

(いくつかのカードで計算してみて)本当だ(笑) これからはカード選びで迷うこともなくなりそうです。

大木さん

ちなみにUHS-I対応のカメラにUHS-IIのカードを使用するのはオーバースペックなのか否かという話もあるんですが、カメラだけで見ればたしかにそうです。

しかし、カードに書き込まれたデータをPCに取り込む時にUHS-II対応のカードリーダーを使うことで、転送時間を短くすることができますよね。なのでドローンなどではUHS-IIに対応したホスト(カメラ)はないのですが、編集時の時短を考えてmicroSDでもUHS-IIの高速なカードを用意しています。

ペンタファン

カメラ自体ではオーバースペックだけど、編集まで含めたトータルのシステムのバランスを考えて、ということなんですね。やっぱりここでもフォトグラファーやクリエイターの側に立った思考をしているんですね。

大木さん

だから私たちPGDのスタンダードはゴールドのカードなんです。エントリークラスのカメラであっても手に取りやすい価格で高性能なカードを使って欲しいのでかなり頑張っています。

多くの場合、カメラの価格の10%ぐらいの金額をメモリーカードに投資していただければ必要とされる中で一番良いカードが買えるぐらいのバランスになっています。

永久保証という言葉について

ペンタファン

最後に保証について。パフォーマンスの高いメモリーカードには永久保証というサポートがついたものがあります。それに対しPGDでは3年保証となっている理由をお聞かせいただけますか。

大木さん

ハイエンドのメモリーカード製品を購入する際、保証の内容は製品選びの大きな要素です。永久保証を謳う製品もある中、プログレードデジタルは3年保証としています。

こではPGDはベンチャー企業であって、そのぐらいの規模の会社が永久(無期限)保証というのはユーザーに対して無責任ではないかという考えがあります。PGDクラスの会社として責任が持てるのが製品のライフタイム(製品寿命)のである3年間という期間が責任を持てる範囲だろうとしています。

ちなみに、永久保証という言い方をすると一生涯もつもののようなイメージを与えてしまいますが、これが意味するのは通常の使い方をしていれば製品のライフサイクル(製品寿命)まではもちますよという意味なのです。

保証の概念については日本とアメリカでまったく違って、もともと向こうではライフタイムワランティ、つまり製品のライフタイムを保証するということなんですが、日本語に訳したときに永久保証としてしまったことで語弊が生まれています。あくまで人間のライフタイムじゃない、アメリカは保証についてはとても理屈だっているんですね。

ペンタファン

なるほど製品のサイクルに関わってくる話なんですね。たしかに3年使えばそのころにはさらに高速なカードや規格が出ているかも知れないですし、寿命まで安心して使えるのであれば3年というのは合理的な期間なのだと理解できました。

3回にわたって非常に奥の深いお話しを聞かせていただきありがとうございました。私たちとしてはこのサポート担当ものすごい熱量を持っていそうだぞ……と軽い気持ちで機会を作っていただいたのですが、想定をはるかに超える熱くて優しいメモリーカードの話を聞けて感無量です。ありがとうございました。

セールのお知らせ

Amazon.co.jp プログレードデジタル

2021年6月21〜22日に開催されるAmazon Prime DayでプログレードデジタルのCFexpress製品が 20%OFF、SD Cobalt製品が10%OFFとなるセールとなるそうです。この後に続くインタビュー本編でプログレードデジタルのメモリーカードに興味を持たれた方はぜひこの機会に手に取ってみてください。

Amazon Prime Day

この記事を書いたライター

ペンタファン編集部

PENTAXの一眼カメラ、手に握ってファインダーを覗けばやっぱり楽しい。一緒に沢に落っこちたり、泥にまみれてくれるそんなカメラが楽しくないわけない。そんな楽しさ・面白さをシェアしたい、そんな場所がペンタファンです